沖幸子イメージ
仕事人秘録
日経産業新聞連載

 新たな家事の形探るC

   生理用品開発・販売に奔走
   
   沖氏がライオンで最初に担当した仕事は新しい生理用品の開発だった。
   

   8人前後のプロジェクトチームに加わり、マーケティングを担当することになりました。
  「消費者が実際にどんな生理用品を使っているのか」。徹底的に使用済みの製品をか
  き集めなければマーケティングなどできません。そこで、いろんな場所にある公衆トイ
  レで使用済みの生理用品を回収して回りました。
   「どういう素材で、どんな不燃布を使っているのか」。回収した生理用品を引き裂いて、
  多角的に研究する作業は本当に楽しかった。得られたデータをもとに試作された生理用
  品を自ら試着して、使い心地をとことん試しました。触れた感覚や耐久性など検証項目は
  山ほどありました。
   1年半程度で新製品が完成すると、今度は販促活動です。全国の問屋のバイヤー向け
  に吸水性などを実演して見せたり、全国のスーパーを売り歩いたりしました。売り上げを伸
  ばすため、東奔西走したことが奏功したのか、発売からしばらくした後、会社からチームの
  メンバー全員を表彰して頂いたことは今でも誇らしい思い出の1つです。

   入社から4年目、本社勤務となった。

   本社でもマーケティング担当でした。初めて企画書の作り方などを学び、商品企画の醍
  醐味(だいごみ)を味わいました。
   ただ、女性のメンバーは私1人だけだったことに驚きました。現在のライオンは元気に活
  躍するキャリアウーマンが珍しくないと聞いていますが、消費者に最も身近な生活用品を
  製造する企業ですらそうだったのですから、その当時はいかに女性の社会進出が遅れて
  いたかお分かりになると思います。
   そんなある日、客室乗務員を辞めた後に大学で聴講していた先生にお会いする機会が
  ありました。当時、夫はロンドンに赴任しており、先生から「ロンドン大学はマーケティング
  分野で評価が高い。留学して勉強してきたら」と強く薦められました。
   とはいうものの、留学するためにライオンを退社したくはありません。そこで、休職して留
  学することは可能かどうかを人事部に尋ねたところ、認められないとの一点張りでした。
   ただ、幸運にも小林宏会長(当時)が私と同じく兵庫県人会で役員をなさっていたことを
  思い出しました。そこで、思い切って兵庫県人会のパーティーで直訴してみたのです。
   今から思えば本当に恐れ多いことをしたものですが、小林会長のご尽力により、会社を
  休職する形で留学を認めてもらえることになりました。留学期間中は無給で、社会保険料
  の支払いも自腹でした。
                                        (2010.12.15 日経産業新聞)

 


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