沖幸子イメージ
高級ブランドビジネス

米国の最新翻訳ミステリーを読んでいたら、スタイリッシュな生き方の登場人物がアルマーニーの服を着て、ラブラドールリトリーバーの犬を飼っている記述があった。最近は、映画の中でもセレブでかっこいい女性がプラダやグッチ、アルマーニーなどの高級あこがれブランドの服や靴、バッグを身にまとい、スタバのコーヒーを飲みながら仕事をこなすハンサムキャリアウーマンとして颯爽と登場し、幅広い女性の観客を魅了する。
20世紀に登場し、成長した高級ブランドグッズは、映画や小説にスターとともに登場しながら大きくなっていった。

21世紀の今、最も成功しているブランドは何か。
ヴィトン、グッチ、シャネルなどいろいろある中で、注目すべきはジョルジオ・アルマーニーといわれている。個人的にも好きなブランドで、そのビジネス戦略にもとても興味深いものがある。
アルマーニーグループとしては、「ジョルジオ・アルマーニー」、「アルマーニー・コレッツィオーニ」、「エンポリオ・アルマーニー」、「アルマーニー・エクスチェンジ」などがある。「アルマーニー」ブランド商品は世界37箇所、扱うショップも300以上あり、そこで働くスタッフも約5000人近くいる。公表されていないが、推定売上額も数千億円といわれる。
現代のファッションブランドビジネスのなかで、世界中から注目されている理由。
それは、売り上げの多さだけでなく、時代を見据えながらの卓越した感性によるイメージ戦略。2005年のイギリス代表のサッカー・チームのユニフォームは「ジョルジオ・アルマーニー」作、同じ年のスペイン王室所有のヨット「ブリボン」のクルーの制服もジョルジオ・アルマーニーによるもの。
アルマーニーはヨーロッパのみならず、アジア、特に中国や日本でも売り上げを伸ばしている。
1934年生まれのジョルジオ・アルマーニは大学では医学を専攻、パートナーのセルジオ・ガレオッテイはアイデアマンでもあり最高のマネージャーでもある。
アルマーニーがデザイナーとしての活動に専念することができたのはセルジオとの二人三脚のおかげとも言われる。
70年代、アルマーニが行なったファッション革命。それは、「働く」オトコの服を「遊ぶ」男の服に変えたこと。背広にやわらかい肩の線を加え、そのまま夜のパーティに出かけられる。会場のライトにあたると高級感があり柔らかい感じにも見える布地を応用したのである。
この新しい風を感じられるアルマーニーのオトコの服は、従来の背広のような硬い感じに嫌気が差し始めた知的セレブの間で「待ってました」とばかりに支持され始めたのである。やがて、この発想を女性の服に用いたらどうなるか。アルマーニーの優れたデザイナーとしての感性は、「遊ぶ男の服」は「働く女の」服へとつながっていくのである。つまり、オトコが威張るような肩幅のいかつい背広を女性に応用してみる。これまでの女性のファッションの定番だった、女性の色気を丸出しにしたやわらかい女の服も時代に合わなくなっていたのをアルマーニーの先を読む感性は感じ取っていた。
女性らしい柔らかいオトコの服と、男性の背広のような硬いオンナの服。
そして、より知的で社会で活躍したいセレブの女性たちにもこのファッション・コンセプトが支持され始めたのである。
アルマーニーのファッション・コンセプトは、「女性をより強く、男性をより洗練したい」願いから生まれたというが、その時代を読み取る発想のすばらしさの原点。それは、男女の区別なく同じ人間としてのあるべき新しいファッションは何か、という発想から生まれたこと。その人気の秘密は、やがて来る中性時代にピッタリマッチし、高感度で高級志向の知的大人の男女のライフスタイルそのものを感じさせ、それが支持されているからだろう。

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